気まま視聴覚室

人生は音楽だ。映画のような人生を。

サイコ

text:
サイコ裏窓

全てのサスペンス映画のルーツとまで目されているアルフレッド・ヒッチコックの「サイコ」。言わずと知れた傑作...のはずなのですが、最近初めて観ました。こりゃすげぇわ。

名作と言われながら、そして自分もそれを知っていながら未だに鑑賞していない映画がゴロゴロとあります。特に自分が生まれる以前のものだとどうしても多くなってしまうのですが、でも紳士の嗜みとして観とかなきゃ駄目でしょ常識でしょってか今まで生きてきた間にテレビでも何度も放映されてたんじゃないの的な名作を観ていなかったりするんですよね...、僕。しかしそういった名作をこの歳になって初めて観られるというのはある意味幸せなことで、嬉しかったりする。

サイコもそんな作品のうちの一つだったのですが、観てたまげました。作品が色褪せないというのはこういうことを言うのだと思いますが、実に面白い。オープニングからラストまでテンションを維持し続けている脚本や演出にも驚かされましたし、カメラワークと音楽も最高。物語の視線を次々に変えられてしまう巧みさにちょっと乗り物酔いの感覚さえ覚えます。夜中に観て怖すぎて後悔...。

以前「裏窓」や「北北西に進路を取れ」を観たときに、ヒッチコックはサスペンスではあるけど上品さというかユーモアや洒落っ気を併せ持った作品を創る人なのね、と理解していましたが、このサイコは純粋に暗い。全く異なる作風も創れてしまう人だったんだと分かり恐れ入りました。

ラスト近くの説明的なシーンが不要という人もいるようですが、一旦観客に我に返る時間を与えておいて、ラストカットへ行った際の衝撃を高める効果があったかと思うので、僕はあって良かったと思いますね。まぁ観ていない人の方が少ないのかもしれませんが、ストーリーについてはあまり触れない主義なのでこのへんで。

ちなみにヒッチコック作品の観たもののうちで、どの作品が一番好きかと問われれば「裏窓」。グレース・ケリーの異常な美しさを観るだけでも価値があると思うので、未鑑賞の方はこちらもどうぞ。