いねむり読書のススメ

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夢を力に - 私の履歴書

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夢を力に --私の履歴書

本田宗一郎「夢を力に --私の履歴書」。

本書は、本田技研工業株式会社創業者、本田宗一郎氏により日本経済新聞に連載された「私の履歴書」に加え、社内報への寄稿や本田語録・女房役であった藤澤武夫にまつわるエピソードを、三部構成に編纂したものです。

名前と多少のバックグラウンドしか知らなかった人だというのに、読後すっかりその魅力に引き込まれている自分に気づきました。こんな嘘みたいにかっこいいオヤジ(=本田, 社員に呼ばれていた愛称でもある)が、ちょっと前までいたんですねえ。面白い人の元へ人は集まり、楽しいモノに人は惹かれる。

愛する者を失う筋書きで感動させるばかりの、通り一遍の流行小説よりも、よっぽど感動します。電車で読んでいると、恥ずかしながら何度もウルッと来てしまうので、その度に出かかった涙が早く乾くようにと目に力を込めて見開いている始末でした。

夢中になることがこんなにカッコイイなんて!と、高校生みたいな感想を抱く自分のかわいらしさに苦笑しつつ、フツフツと密やかに熱い闘志をたぎらせております。人の心を動かす人生っつーのはまったく凄いもので、感謝の念は尽きませんが、そういったものはいつか自分も他人に還元しないといかんなあと感じている。

巻末にオヤジの年譜が付属していますが、個人・会社とも俄には信じられないほどの躍進ぶりです。その影には生涯を通じてオヤジの良き理解者でパートナーであった、おじうえ(=藤澤, やはり社員に呼ばれていた愛称)の存在が欠かせないわけですが、その阿吽の呼吸ぶりにも感嘆の意を覚えます。

技術の本田・経営の藤澤。2人の天才の尊ぶべき努力によって世界のHONDAが生まれ、そして今もその精神が揺らぐことなくHONDAを支えている。考えてみればソニー然り、松下電器然り、大きな会社には会社が大きい理由と意味があるわけで、それを知っていくと社会はますますオモロイ。

オヤジにもおじうえにも最早お会いすることは出来ませんが、HONDAの製品を通して彼らとの接点を持てることに歓びを感じます。遅かれ早かれバイクの免許を取りたいなと思っているのですが、今なら間違いなくHONDAを選ぶでしょうね。

ちなみに、この本ベトナムでも出版されている模様。カブ天国のベトナムが、本田宗一郎をどのようにとらえているか興味が湧くところです。