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ソニーの世界初有機ELテレビ「XEL-1」の映像性能は鬼の仕事だ

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銀座に足を運んだついでに、ソニービルに寄り道をしてきました。目的はもちろん、先日CEATECで発表されたばかりのソニーの世界初有機ELテレビ「XEL-1」を目にするため。高らかに宣言された「ソニーの技術復活」のカタチやいかに。

有機ELは電気を流すと発光する有機素材を使用したディスプレイ技術で、バックライトが不要なため超薄型化が可能なほか高コントラスト・高輝度、広色域などの特性を持っています。かなり以前から次世代テレビの本命と目されてきましたが、技術的・コスト的なハードルの高さから、民生用製品に搭載された例はこれまでにauMEDIA SKINをはじめとした小型電子機器が中心で、なかなか大きなものを拝むことはできませんでした。

そのうち次世代技術としてSEDFEDなど別の技術も台頭するようになってきた中、ソニーが将来の映像事業の根幹を担う技術と信じて開発を続けてきた結晶が、「XEL-1」です。

ティザー広告発表時から「最薄部3mm」(驚愕!)というディスプレイ部の薄さを際立たせるビジュアル展開をしているため、実機を目にしたら先ずそこに目がいくだろうなと思っていたのですが、実際は違いました。

映像ですよ、映像!!

XEL-1を初めて目にした人たちの口から漏れるのは、「......キレイっ!」というため息まじりの言葉。ビルに入る前は、僕と同じように先ずはディスプレイ部の薄さに驚いてやろうという心構えがあったと思うのですが、映像を見た瞬間にそんなことを忘れさせてしまうほど、その映像にはインパクトがあります。

クオリティが尋常じゃないです。これは見た人にしか分からない感動だと思いますが、多くの人にとって自分の想像をさらに超えた映像体験になるものと思います。BRAVIAやAQUOSなどの液晶テレビも最近かなり高品質な映像を実現してきていますが、全然別物というのが感想。僕の貧困なボキュボラリでは説明が困難なのですが、「極めて旨い映像」です。寿司やカットフルーツなど実寸に近いサイズの映像が映ると、本物と見まがいますね。食欲をそそられる映像という体験。「黒」の表現力もいままでに見たことが無い。

スペック的には1,000,000:1以上という「コントラスト比」・高ピークの「輝度」・幅広いダイナミックレンジが実現する高い「色再現性」、数μ秒という「反応速度」、すべてが別次元。ちなみにBRAVIAのフラッグシップモデルKDL-70X7000のコントラスト比は1,500:1、反応速度は8msecですので、XEL-1はまさに桁違いなのです。コントラスト比に至っては既存の計測装置では計測不能で実際にはそれ以上とのこと。スカウターだったらボンッと逝ってしまうということです。また、液晶テレビのスペックとしておなじみの「視野角」は、有機ELの場合構造上存在しません。実際に見てみて納得しましたが180度バッチリ映ります。

XEL-1の11インチで20万円という価格はプレスリリースを読んだときには高いなと思ってしまったのですが、その映像を目の当たりにすると「いや安いかも...」と思わせてしまう魔力があります。質感も申し分なく、モノとしても魅力がありますね。卓上テレビという位置付けのようですが、これが自分のデスクの上にあったら嬉しい。Appleのプロダクトにも通ずる訴求力があるといえるでしょう。

さて、有機ELテレビはようやく産声を上げました。今後BRAVIAとして、あるいは別のブランドとしてより大画面・高画質・低価格になってラインナップが充実してくるのが楽しみです。「ソニーの技術復活」を十分に予感させる製品に仕上がった感がありますが、そろそろ「コンセプト力の復活」も見てみたいところ。

XEL-1。最薄部3mmという驚愕の仕様を、一瞬で忘却の彼方に押しやる圧倒的な映像性能。これは鬼の仕事です。