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毎日をちょっぴり楽しくしてくれる装置。

iPhone 2.1登場。悪い思い出はやがて忘れ去られる。

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iPhone関連で大きなニュース。9月9日に行われたLet's Rockイベントで明かされていたように、12日(日本時間13日)よりiPhone 2.1 Software Updateの配布が開始された。早速アップデートの恩恵にあずかっているユーザーも少なくないはず。

OK分かった、白状しよう。iPhone 2.0.xは酷かった。Safariは落ちまくるし、日本語入力は悟りを開いた禅僧なみの忍耐を必要とするほど重くなることがあったし、iPhoneアプリのインストールは遅いし失敗するし、電波の受信感度は低かったし、バッテリの持ちもあまり良くなく、コンピュータに接続する度にこの世が終わるまで続くのではないかと思わせるほど延々と時間のかかるバックアップに悩まされた。

iPhoneに対し「ケータイ以上のなにか」を求めるニッチな層以外に向けては、たしかに何のアピールにもならなかった。しかしそれも今や悪い思い出のひとつでしか無くなったかも知れない。そして得てして、悪い思い出は忘れ去られるものだ。

iPhone 2.1は公式アナウンスとして以下の修正点・改善点が挙げられている。

  • 通話発信時のエラーと通話中のエラーによる回線切断の発生頻度の減少
  • バッテリー寿命の向上
  • iTunes へのバックアップの所要時間の減少
  • メールの信頼性の向上(特にPOPおよびExchangeアカウントのメール取得時)
  • 他社製アプリケーションのインストール速度の向上
  • 他社製アプリケーションが多数インストールされている場合にハングおよびクラッシュが生じる問題の修正
  • SMSのパフォーマンス向上
  • アドレスデータの読み込みおよび検索速度の向上
  • 3G信号強度表示の正確性の向上
  • SMS着信時の警告音繰り返し機能(2回まで追加可能)
  • パスコード入力に10回失敗するとデータを消去するオプション
  • Geniusプレイリスト作成機能

改善された受信感度

アップデートを行ってからあまり時間は経っていないが、その僅かの時間の感想から言えばアンテナの感度は確実に良くなっている。iPhoneのアンテナ・インジケータは国内ケータイのそれとは異なり海外仕様端末らしい「5本」の表示になっている。しかし5本目の表示が見られることは非常にまれで、他のソフトバンク端末が3本の表示を示しているところでもiPhoneでは1〜3本というのが相場だった。ただし、iPhoneのアンテナ・インジケータは国内端末よりも若干厳しい傾向にあったことも事実で、たとえ1本の状態でも通話・通信とも自分の経験の範囲では何の問題も無かったことも言っておかなければならない。

これがiPhone 2.1になってインジケータの表示本数が一気に増えた。同じ場所で使ってもこれまで3本だった表示が5本になって安定している。単に表示基準を甘くしただけではないのかと邪推しなくもないが、これまで圏外だったところでも安定した通信が行えるようになったし、海外ではこれまで問題だった3Gネットワークへの接続不具合が解消されたという報告もフォーラムに続々と上がっている模様。

バッテリーの持ちは良くなったのか

この点についてはアップデートから1日として経っていないためまだ判断がつかない。ただし、個人的にはバッテリーの持ちが悪すぎると感じたことはこれまでにも一度もなかった。たしかに減りは幾分速くはあったが、1日持たずとして切れてしまったことはないし、それなら1日1回充電すれば充分だったはずだ。自分の中ではiPhoneに限らず毎日持ち歩く携帯端末は1日1回の充電をするのが当たり前のサイクルなのだが、バッテリーが切れて騒ぐ人はいったいどんなサイクルで使用をしているのだろう。とはいえファームウェアの最適化でバッテリーの持ちが良くなるのであればそれに超したことはない。充電をし忘れた日や、普段よりも多く通話・通信を行った日に結果は明らかになる。

劇的に速くなった日本語入力エンジン

日本語入力エンジンの処理が最適化され、まったく別物になった。世界共通というiPhoneの仕様からか、このローカルな修正事項は公式アナウンスに含まれていないものの、日本のiPhoneユーザーにとってこれはあまりにも大きなニュースだ。「iPhone狂想曲〈インプットメソッド〉篇」というエントリーでタッチパネルを使った入力方式の新しさをアピールなどしたが、2.0.xの日本語入力エンジンの処理の重さを擁護するのは勝ち目の無い闘いだった。国産ケータイの日本語入力エンジンがどのメーカーでも極めて安定した挙動や速度を示すのに対し、2.0.xは散々たる結果に甘んじていたのだ。iPhoneの起動直後はかなり軽快に入力が行えるものの、時間が経過するごとに変換処理が重くなり、酷いときには1文字入力する度に次の変換候補が表示されるまで、体感3〜5秒という途方もなく長い時間を強いられ、その時間をつぶすために近所のカフェに足を運ばなければならないほどであったのである。

それが、2.1になりまさに劇的に速くなった。1文字入力ごとに予測変換候補がスムーズに表示されるようになり、思考を妨げられることもストレスを感じさせられることも無駄なコーヒー代を捻出する必要もなくなった。

50音全ての文字を文字通り1タッチで入力出来るiPhoneのテンキーモードを使ったフリック入力は、これまでの常識を覆す画期的な入力方式の提案であったと思う。そして今回処理速度という最も基本的な部分が改善されようやくその真価を発揮できる時が訪れたというわけだ。「変換のためのかなを入力する」という点においてはフリック入力は個人的にもはやケータイのテンキー入力を凌駕していると思う。

ちなみに2.1から日本語の連文節変換が可能になっている。2.0.xでは単文節ごとの変換を要され、少しでも長く入力すると全てひらがなかカタカナへの変換しか行えなくなるため、正しく変換するにはせっかく入力した文字をいったんバックスペースで削除しなければならないとう非効率ぶりだった。前述した処理の重さと相まってこれもまた日本語入力へのストレスの一因となっていた仕様である。

以前の単文節変換に比べれば格段に便利になったものの、しかしこの点はまだまだ改善が必要。連文節変換時には変換候補の組み合わせの数が限られてしまい、文節ごとの変換候補を選ぶのが難しい。操作方法をどうするかは難題であるが次回以降のアップデートに期待したいところ。

また自分はそれほど利用頻度が高くないが、主にテンキーモードを使用しかつ顔文字を多く利用するユーザーには朗報。iPhoneに登録されている顔文字全ての変換候補を表示するには、2.0.xではフルキーボードモードで「かおもz」と入力する必要があったところ、2.1ではテンキーモードで「かおもじ」と入力しても表示出来るようになっている。

ちなみに「あっぷる」で変換できた(アップルロゴ)が2.1ではなぜか変換出来なくなってしまったのがちょっと寂しい。

CheetahからPumaを彷彿とさせるアップデート

そのほか細かく挙げていくと追いつかないほど多くの改善点が盛り込まれた2.1。全体的にあしまわりが強化された印象で、各アプリの起動や挙動、UIのレスポンス等もかろやかになった気がする。Safariはやっぱり落ちるが2.0.x時代の悪夢を思うとかなり改善されたものだ。

目立った新機能はiTunes 8への搭載と同時に行われたGeniusのみで華々しさはないが、全体的に安定性・速度の向上に努めた堅実なアップデートであり、日々の利用を考えると非常に満足のいくアップデートと言える。

コアなMacユーザーなら覚えがあると思うが、これはMac OS X 10.0 Cheetahあるいは10.0 Public Beta (Siam) から10.1 Pumaへのアップデートを彷彿とさせる。

Cheetahは「アップルがコンセプトもアーキテクチャも従来と異なる全く新しいOSを作ったんだぜ」、といういわば〈思想〉のリリースであった。DVD再生機能などが無い、対応機器が極めて少ない、速度も遅い、おまけに不安定という状態であったため利用者は限られたニッチ層にしぼられ、Mac OS 9と併用して使うユーザーが多く、とてもメインOSにはなり得なかった存在である。しかしその〈思想〉の部分で多くの話題を集めて注目はされた。

そしてCheetahのリリースから半年後に無償のアップデートとして提供されたPumaでは、これまでに欠けていた様々な機能が提供されると同時にシステムのパフォーマンスが大幅に向上、ことえりのバージョンも上がり変換精度が飛躍的に上がったという歴史がある。

今回のiPhone 2.0.xから2.1のアップデートは、このCheetahからPumaへの流れに印象が重なると思うのは自分だけだろうか。

兎にも角にも、iPhoneは「ようやくまともに動作する」端末になった。しかし重要なポイントはそこではなく、2.1のリリースによりアップルがユーザーの期待に応えることの出来るメーカーであることを示すことが出来た点が大きい。

作ったら余程大きなバグが無い限りアップデートされないガラパゴスケータイと異なり、iPhoneは将来のアップデートが比較的短期で行われることが約束されているようなものだ。今後も新機能が実装され、機能が改善され、不具合が修正されることに疑いを抱かせず、ユーザーに大いに期待を抱かせる良いリリースだったと思う。