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MacBookがOCZ Vertex SSDで驚くべき性能に

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OCZ Vertex Series 250GB SSD (OCZSSD2-1VTX250G)

確定申告の結果思ったより還付金が戻ってきたのでその一部を思い切って投資して、MacBook (Late 2008)のHDDをOCZ Technologyの「Vertex Series 250GB SSD (OCZSSD2-1VTX250G)」に換装しました。安くはない買い物だけに到着するまでは購入したことを若干後悔していたのですが、いざ使ってみるとそんな後悔は吹き飛ぶインパクト。HDDとはちょっと速さの次元が違う感じ。良い買い物をした。

ご存知ない方のために簡単な解説をしますと、SSD (Solid State Drive)はその記憶媒体に不揮発性メモリを用いた、ハードディスク (HDD)と同様のドライブ装置。Serial ATAなどHDDと同じインターフェースを搭載しているため、HDDの代替としてMacやPCに換装することができます。SSDはHDDと異なり物理的なディスクを持たないため、シークタイム(ディスク上でヘッドを移動させる時間)やサーチタイムが無く高速に読み書きできるのが特徴です。ディスクを回転させる必要がないため消費電力も一般的にはHDDより少なく済むので結果ラップトップなどのバッテリ駆動時間が伸び、物理的に駆動する部品がないため衝撃にも強いというメリットもあります。また、スペックには現れませんがHDDのように “ブゥーン” というモーターの回転音や “カリカリ” という読み書き時の音もなく非常に静かなほか、熱もあまり発生しません。

もう良いことづくし、と言いたいところですが現状玉に瑕なのがその価格。安価なものが登場しだしたとはいえ128GBのものでも30,000~40,000円近くの値段がつき、HDDと比べるとだいぶ高い。ただし、HDDがそうであるようにSSDも新製品が登場するごとにより大容量化・低価格化してきていますので、あと数年も経てばHDDを駆逐し特にラップトップ市場においてはメインストリームに乗ってくることが予想されます。

OCZ Vertex Series SSD

Vertex SeriesはOCZ Technologyから今年3月上旬に発売が開始された最新のSSDで、読み込み速度 250MB/sec・書き込み速度 160MB/sec(理論値)とSSDの中でも現行製品の中ではかなり高速な部類でありながら、比較的低価格なのが特徴です。32〜64MBのオンボードキャッシュを備えるほかSumsung製の新コントローラの搭載により、いわゆるプチフリ 現象への対策(?)も施された製品です。購入したのは250GBのモデルで、...まあ正直なかなか迫力のある価格だったのですが冒頭に述べたとおり還付金マジック。

パッケージは第1世代iPod nanoのそれを彷彿とさせるものの、見劣りするのは仕方のないところ。それでもプチプチの緩衝材に包まれて販売されているバルク品よりはかなりマシです。実のところ、僕の中では初期不良のみ交換対象のいわゆるバルク品という位置付けで捉えていたのですが、購入してみるとちゃんとメーカーのリテール品として販売されているもののようですね。通常の使用方法による故障の場合のみが対象ですが購入から2年間の保証が付いていました。

スチールとアルミニウムの金属外装にくるまれたSSDを取り出すと、ヒヤッとした温度とソリッドな質感が伝わってくる。内部へのアクセスはSATA IIのポートのみ。バッファローのSSDにはUSBポートも付いていて、USBケーブルで直接コンピュータに接続することが出来るのですが、Vertexにはそれが無いので換装前に内蔵のHDDからデータを転送したい場合には別途USB接続のHDDケースなどが必要です。重量はHDDよりもずっと軽いものと思っていたのですが手に持った感じではHDDと大差ない。振ってもまったく音がせず、HDDとは明らかに異質のものという印象があります。

Carbon Copy Clonerでかろやかにデータ移行

ディスクユーティリティ

HDDからのデータ移行はクリーン・インストール + Time Machineでやろうかとも思ったのですが、Mac自体をつい数ヶ月前に購入したばかりで特に不具合は起きていなかったためより簡単な全データのコピーで行うことにしました。お世話になるのはもちろんCarbon Copy Cloner (CCC)。

VertexをMacに接続するとデスクトップにマウントされますが、CCCでデータ転送する前にディスクユーティリティでフォーマットします。MacBook (Late 2008)に換装するのでパーティションを “GUID パーティションテーブル” で切るのがポイント。Vertexの工場出荷時設定はマスター・ブート・レコードになっているのでご注意。ボリュームフォーマットは特別目的が無いかぎりMac OS X 10.5 Leopard標準の “Mac OS 拡張(ジャーナリング)” で良いでしょう。

あとはCCCでコピー元・コピー先のドライブをそれぞれ選んで実行するのみ。USB接続で行ったので転送速度はSSDだからと言って速いことはなく、130GB近くのファイルの転送に2時間かかりました。この間はMacで別の作業をしない方が望ましいのでコーヒーでも淹れて気長に待ちましょう。一時的にTime MachineやMobileMe、スクリーンセーバーなどの同期や起動設定も切っておくとbetter。データ転送が無事完了したらHDDの換装作業に移りますが、念には念をという慎重派の方は一度コピーしたドライブでMacが起動可能か確認すると良いと思います。

HDDをSSDに換装する方法はHDDからHDDに対して行う作業となんら変わりありません。MacBookはユニボディになってドライブの換装作業がおそろしく簡単になったので特に迷う点はないと思いますが、詳しくは下記の記事が参考になります。

なお、MacBook本体に内蔵HDDを固定するために直付けされているパーツをSSDに付け替える際、星形のトルクスドライバー(T6)という特殊な工具が必要です。上のページではプラスドライバーと説明されていますがプラスドライバーではねじ山をつぶしてしまう可能性があり難しいと思います。

HDDの限界を突破、SSDで次元を超えた速さに

SSDに換装すると何が変わるかというと、もう何はともあれMacBookのスタートアップ・タイム(電源を入れてから操作可能になるまでの時間)からして明らか。SSD換装前後で時間を計ってみたのでその結果をご覧ください。

  • MacBook (Late 2008) / 2.4GHz Core 2 Duo / 4GB 1067MHz DDR3
  • HDD(換装前): HITACHI Travelstar 7K320 (7,200rpm, 320GB)
  • SSD(換装後): OCZ Technology Vertex Series 250GB SSD (OCZSSD2-1VTX250G)
  • ログイン項目
    ログイン項目
  • テスト条件
    MacBookの電源投入後、上記ログイン項目が全てロードされ操作可能になるまでの時間を計測。電源はACアダプタ駆動とする。

ずいぶんと大雑把な計測の仕方をしているので誤差は多分にありますが、小数点以下の秒数など気にする必要もないほど結果には歴然とした差が生じました。数値上ではおよそ3.5倍の差がつきましたが、体感的にはもっと速い気がしてきます。これなら打ち合わせで急にコンピュータを開くことになったとしても「少々お待ちください」と言えるレベル。下手なPCのスリープからの復帰時間よりも速いのではないでしょうか。

各アプリケーションの起動時間も大幅に短縮されて、HDDでの使用時とは比較になりません。アプリケーションを起動するとDockでアイコンがバウンドしますが、Macへ電源投入後初回の起動で Photoshop CS4 → 2バウンド / Illustrator CS4 → 4バウンド / Fireworks CS4 → 2バウンド / Dreamweaver CS4 → 2バウンド / Coda → 3バウンド というところ。自分が通常Macを使用する上で最大に負荷がかかるのはおそらくVMware Fusion上でのWindowsの起動ですが、こちらもXP SP3で1分 / Vista SP1で1分20秒 ほどのスタートアップ・タイムに(サスペンドからの復帰はもっと高速)。また多くのアドオンをインストールしたFirefoxもさくっと起動するようになり、非常に快適です。FinderまわりでもCoverFlowやQuickLookのプレビューが高速になっている。全体的にHDD利用時とはちょっと速さの次元が違うな、という印象を受けます。

分かりやすいので起動時間に目を向けましたが、コンピュータを使用する上でファイルの読み込みや保存は常に行われているまさに基本中の基本の処理なので、その部分が高速化するとコンピュータの体験そのものが劇的に変わるものなのですね。想像していた以上の効果が出てかなり驚きました。SSDの使用が初めてのためもしかしたら気がついていないだけかも知れませんが、プチフリに関してもそれを感じさせる現象は一切起こっておらず、Vertex Seriesはかなり優秀な代物のようです。

Xbench Disk Test

続いてMacでのベンチマークテストではお馴染みのXbenchを使ってDisk Testを行ってみました。こちらも換装前後それぞれの比較でご覧ください。

Xbench Disk Test (Sequential)
Xbench Disk Test (Random)

Sequential・RandomともHDDとの圧倒的な性能差が出ていますが、注目はRandomの方でしょうか。アプリケーションは起動すると物理メモリではまかないきれない自身の作業領域を、スワップとよばれる一時ファイルを作成して仮想メモリとして使用します。そのスワップファイルへのアクセスこそがRandomであり、これだけ差があるとサクサク・キビキビという使用感覚としてはっきり現れることになります。ちなみにこれまで使用していたHDDはHITACH Travelstar 7K200シリーズで、MacBookデフォルトの5,400回転よりも速い7,200回転のもので読み書きとも速いモデルだったので、デフォルトとの性能差はさらに大きいと言えます。

Intel, Sumsung, OCZ Technologyをはじめ半導体各メーカーが開発にしのぎを削りあっているSSD。今後より高速なモデルが現れるのは間違いないのですが、現在MacやPCの内蔵ドライブのインターフェースはSATA II(転送速度理論値300MB/sec)が主流。それを超える製品が出てきても性能を生かし切れないということになってしまうので、実効速度・容量・価格のブラッシュアップの方に力を入れてもらえると幸せになれそうです。電源投入後5秒でOSが起動、というMacが今後数年のうちに現れるかもしれませんね。

ありあまる豊富な資金の使い道に困っているという方は24台のSSDをRAID接続することで、Microsoft Office製品6つを0.5秒で起動し世界一速く見積書を作成開始できるワーク環境を構築されてみてはいかがでしょうか。