気まま視聴覚室

人生は音楽だ。映画のような人生を。

プレステージ

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プレステージ

ども、いろいろとバタバタしていまして微妙に更新さぼってます。ちょっと息抜きで観てきました「プレステージ」。プロモーションにMr.マリックやらプリンセス・テンコー、Gacktまで引っ張り出されて公開前にかなりB級オーラを放っていた作品でしたが(一時はタイトルが「イリュージョンVS」になりそうだったとか)、蓋を開けてみれば結構オモシロカッタ。

19世紀末のロンドン。若き奇術師アンジャーとボーデンは、中堅どころの奇術師ミルトンの元で修行をしていた。しかしある日、アンジャーの妻で助手のジュリアが水中脱出に失敗し死亡。事故の原因はボーデンの結んだロープが外れなかったことだった。これを機にアンジャーは復讐鬼へと変貌し、2人は血を流す争いを繰り返すことになる。その後、結婚し幸せな日々を送るボーデンは、新しいマジック「瞬間移動」を披露するのだが...。
奇術師(クリストファー・プリースト)

原作は読んではいませんが、世界幻想文学大賞を受賞したクリストファー・プリーストの「奇術師」。ミステリー・サスペンス・ファンタジーそしてマジックという設定でジェフリー・ディーヴァーの「魔術師」を連想してしまっていたのですが、あちらは近代ニューヨークが舞台。「奇術師」はそれよりも約一世紀遡った19世紀末のロンドン。CGの使用を極力控えてロケや美術セットを駆使したという撮影や、デジタル彩色を使用しない光化学プリントによる雰囲気たっぷりの画作りに並々ならぬこだわりを感じます。

クリストファー・ノーラン監督お家芸の、時間軸をずらして伏線を張りつつどんでん返しに落とし込む手法は健在で、それだけでちょっぴり嬉しくなる。しかしメメントの時のように悪戯に使いまくる感じではなくここぞという時に使われていて、そういった意味で言うと落ち着きを感じる。物語の冒頭でマジックには3つの段階、そこに種がないことを確認する〈プレッジ〉・パフォーマンスを展開する〈ターン〉・そしてマジックの完結で観客に予想を超えた驚きを与える〈プレステージ(偉業)〉で構成されることが示されますが、この映画自体がそれに倣っているのがニクイところ。いわゆる大どんでん返しの部分は物語の中盤頃から薄々感づいてしまい「フフやっぱりね」なんて余裕ぶっこいていたのですが、最後の最後にまたひっくり返った。そうきますか...と、してやられた思いです。気がつかなかったなぁ。複雑に張り巡らされた伏線を確認する意味でもう一回観たいなと思わせてくれる映画で、なかなか満足です。

バットマン・ビギンズに続きクリストファー・ノーランとタッグを組むクリスチャン・ベールは相変わらずダーク・サイドなオーラを醸し出していますが、この作品の雰囲気や役に合っていますし、安心して観てられる俳優さんでやはりカッコイイ。すんごくどうでもよくて横暴なことを言うと、クリスチャン・ベールをライト・サイドにして且つ演技をこれでもかというほど分かりやすくすると、僕のイメージの中ではトム・クルーズになるのですがそんなことない?そしてこれまでX-MENでの印象しかなかったヒュー・ジャックマンがかなりの演技派と判明したのが目からウロコ。

そうそう。もしこれから観に行くという方には、映画のキーパーソンで実在の人物でもあるニコラ・テスラについて予備知識を得た上で行かれることをオススメいたします。知らないと単なる胡散臭いインチキヤロウとしか思えませんが、バックグラウンドを知ってみると物語が実に良く練られたものと分かります。この役にデヴィッド・ボウイを配する妙。