気まま視聴覚室

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パフューム - ある人殺しの物語

text:
Perfume: The Story of a Murderer香水 −ある人殺しの物語

パフューム −ある人殺しの物語。パトリック・ジュースキント作の同名小説の映画化です。スティーブン・スピルバーグとマーティン・スコセッシも映画化に名乗りを挙げしのぎを削った中、それを射止めたのはトム・ティクヴァ。小説の方も監督の方も知らなかったのですが、サイトのイントロダクションを読んで観たくなった。

パトリック・ジュースキントはドイツ人なのですが、いやみったらしいことに舞台は18世紀のフランス。こりゃ相当なインテリ作家に違いないなと思ったら、トム・ティクヴァもドイツ人で、おやおやとニンマリとする組み合わせ。

原作のタイトルにも付いているので仕方がないのですが、副題の「ある人殺しの物語」はあえて意識せずに観た方がよいかも知れません。というのも、物語として連続殺人という理解しがたい行為に至る展開ではありますが、テーマは別にある。無視するわけにもいかないのですが、主人公の罪だとか被害者の心情にスポットを当てて行くと何だかややこしくなってしまうな、という感想です。

トコトン孤独で切ない主人公の人間像や境遇、アイロニックなラストの2つの結末を考えると、なかなか奥深いなあと感じさせる物語で、原作を手に取ってみたくなります。重い内容であるにも関わらずどこかファンタジックでもあり、ひじょうに独創的で、よくよく考えると映像以上におぞましい内容を淡々としたナレーションでつづっているあたりに、文学的な「香り」を感じてみたりもする。

映像は硬質にまとめられとても美しく、サー・サイモン・ラトルが指揮を執るベルリン・フィル・ハーモニーの音楽との相乗効果がたいへん素晴らしいです!けっこうおすすめ。